【衝撃】 でき ら あ 気になる噂と真相 #684
令和の「できらぁ!」旋風。昭和の無茶振りグルメ漫画が2026年のSNSで大バズりする理由と、現代人が失った「根拠なき自信」
できらぁ――。昭和後期に世に送り出された伝説のグルメ漫画『スーパーくいしん坊』。その主人公・香境洋介が放ったこのあまりにも有名な啖呵が、2026年の今、日本のSNSや動画プラットフォームを席巻している。かつては単なるネットミーム、あるいはネタ画像として消費されていたこのフレーズが、なぜ今になってZ世代やアルファ世代の心を捉え、社会現象にまで発展しているのだろうか。
発端は、YouTubeやTikTokで活動する若手料理クリエイターたちが始めた「再現不可能な漫画飯チャレンジ」だった。作中に登場する「火のついた炭を肉に直接押し付けるステーキ」や「巨大な餃子」といった、物理法則を無視した調理法を現代の科学と技術で強引に再現しようとする試みが大ヒット。無謀な挑戦に対して「本当にできるのか?」と煽る視聴者に対し、クリエイターたちが「できらぁ!」と返して動画をスタートさせるのが定番のフォーマットとなり、瞬く間に拡散した。
物理法則の限界に挑む若者たち

SNSでハッシュタグ「#できらぁチャレンジ」を検索すると、数万件に及ぶ動画がヒットする。画面の中で若者たちが挑んでいるのは、プロのシェフですら二の足を踏むような荒唐無稽なレシピだ。例えば、作中で描かれた「超巨大ハンバーグを崩さずにひっくり返す」という難題。ある動画配信者は、特製の巨大フライ返しとクレーンを駆使し、スタジオを油まみれにしながらも奇跡的に成功させてみせた。
視聴者は、単に料理の完成度を求めているわけではない。失敗し、試行錯誤し、泥臭く目標に向かうプロセスそのものを楽しんでいる。かつてのテレビ番組のような大がかりな演出ではなく、個人の部屋やレンタルキッチンで繰り広げられる「等身大の無謀」が、今の視聴者の心を強く揺さぶるのだ。
「タイパ重視」の時代に逆行する非効率の美学

現代社会は「タイパ(タイムパフォーマンス)」や「コスパ」を極限まで追求する。無駄なことは省き、最短ルートで成果を出すことが美徳とされる世の中だ。しかし、このトレンドはそんなスマートな生き方に対するアンチテーゼでもある。わざわざ時間と金をかけ、失敗する確率が極めて高いことに全力で挑む。その非効率極まりない姿が、息苦しい日常を送る現代人にとって、一種の解放感を与えているのではないか。
都内のIT企業に勤める20代の男性は、「仕事では常に効率と再現性を求められる。だからこそ、プライベートでは『絶対に無理だ』と言われることに全力で挑む動画を見て、カタルシスを感じる」と語る。無駄の中にこそ、人間らしい熱量が宿るのだ。
原作『スーパーくいしん坊』が描いた熱量
ここで改めて、原作である『スーパーくいしん坊』(原作:牛次郎、作画:ビッグ錠)に目を向けてみよう。1980年代に連載された本作は、料理漫画の歴史において異彩を放っている。主人公の洋介は、一流シェフや頑固な大人たちから「そんなことは不可能だ」と突きつけられるたび、不敵な笑みを浮かべて啖呵を切ってきた。彼の料理は、洗練された美食とは程遠い。しかし、アイデアと情熱、そして力技で周囲を黙らせる圧倒的なエネルギーがあった。
当時の読者が感じていたであろうワクワク感が、メディアの形を変えて2026年の若者たちにダイレクトに伝わっている。時代が変わっても、人間の本質的な熱狂のスイッチは変わらないことを、このブームは証明している。
AI時代にこそ響く「根拠なき自信」の価値
2026年現在、生成AIはあらゆる業界に浸透し、論理的で完璧な答えを瞬時に提示してくれるようになった。失敗しない選択、予測可能な未来。それらが容易に手に入るようになった一方で、私たちは「予測不可能な熱量」を失いつつあるのかもしれない。AIはデータに基づいて「不可能である」と冷静に判断する。だが、人間は違う。
根拠などどこにもなくても、「やってやる」と言い切る姿勢。この言葉が持つ圧倒的な主体性は、データ主導の社会に対する強力なカウンターパンチだ。論理的に考えれば不可能なことでも、情熱だけで突破してしまう。そんな泥臭い人間味に、私たちは今、強烈に惹かれている。
単なるミームを超えた、令和の「DIY精神」への回帰
一過性の流行に見えるこの現象だが、その根底にはより深い社会心理の変化が見え隠れする。既製品や完成されたサービスを消費するだけの日々に飽きた人々が、自らの手で何かを作り出し、試行錯誤する「DIY精神」を取り戻そうとしているのだ。それは料理に限らず、プログラミング、ものづくり、アートなど、あらゆる分野に波及しつつある。
「できらぁ!」という叫びは、単なる過去の漫画のセリフではない。それは、閉塞感漂う現代において、自らの可能性を信じ、限界を突破しようとする挑戦者たちの共通のアンセムなのだ。次に何か「無理だ」と言われたとき、あなたならどう答えるだろうか。胸を張って、あの言葉を叫んでみてほしい。 (出典: でき ら あ(Yahoo!ニュース))